男2人兄弟の長男として生まれた私には、女に対しどの様に接したらよいのかが分からなかった。
女を好きになるという感情は小学1年生の頃から一丁前にあったものの、好きな女ほど、いじめてしまう。近づこうとすればするほど、相手を傷つけてしまう「ハリネズミのジレンマ」。
それが小学校時代の私だった。好きになった女にちょっかいばかり出しては嫌われる。そんな不器用な少年だったのだ。
▼白豚君
私は生まれついての色白。しかも、食いしん坊で毎日お菓子ばかり食べ、運動も遊び半分のサッカー位しかしていなかった。その為小学校時代の私は「デブ」だった。
それなりに強い腕力。色白、デブ、ブ男でいじめっ子。女から見れば良い所なんて一つもない。最悪の男だった。
「白豚君」。
当然のように裏であだ名がつく。小学生時代同級生の女達からこっそりつけられていたあだ名だった。親友の男を通して聞いた時はショックだったのを今でも覚えている。
▼バレンタインデーの悪夢
普段は女達から人気がない事にもあまり気がつかない。どちらかといえば悪い事も、嫌な事もをすぐに忘れてしまう性格だからだ。
けれども毎年一回、「白豚君」であった私が「白豚君」である事を思い知らされてしまう日が来てしまう。地獄のような一日が必ず来てしまう。
それが2月14日「バレンタインデー」だ。
女達から人気者の「イケメン君」の所には、恐ろしい程の量のチョコレートが集まる。
下駄箱の中。机の中。ロッカーの中。更には手渡し。あらとあらゆる所にチョコレートがぶち込まれる。
なんとわざわざ家にも届けに来るらしいではないか・・・。
基本的にプラス思考の私は、2月14日、下駄箱の中をまず確認、机の中を確認、ロッカーの中を確認、はたまた帰りの校門の陰で誰か女が待っていないか期待する。
包装用紙に綺麗に包まれたチョコレートが心から欲しかったからだ。
けれども現実とは辛いもの。何処にもチョコレートは見当たらない。
校門の陰にも誰一人として私を待っている女はいない。
家に帰った後も誰かチョコレートを持ってこないか期待をし、チャイムが鳴るたびに、ダッシュで玄関に向かう。チョコレートを持った女が立っている事を期待して。
配達のおじさんだ・・・・。
2月14日。私にとって自分がとことん女にもてない人間だということを、子供ながらに思い知らされる日だった。
▼弟よお前
私には5歳年下の弟がいる。私が小学6年生の時、弟は小学1年生。
弟は同じ両親から生まれたにも関わらず、女にもてる顔とやさしさを持っていた。どちらかといえば、女の方から勝手に告白してくる「イケメン君」の部類に入る奴だ。
性格は、実の兄の私から見ても本当にいい奴。裏表がなく、欲がなく、心から他人に優しい。私とは正反対の人間だ。
私が小学6年生のバレンタインデーの時、衝撃の事実を知ることになってしまう。彼のおかげで。
「ピンポーン」
チャイムが鳴る。私がダッシュで玄関に向かって走り、扉を開ける。
女だ。
小学1年生位の・・・。
「次郎君(弟)いますか〜。」
そんな女が一日5人は来た。それだけじゃなく弟が学校から持って帰るチョコレートの数。半端じゃない。
「イケメン君」はこんなに美味しい思いをしているのかと、衝撃を受けた。
弟からチョコレートをいくつかふんだくり、食べまくったのは言うまでもない。食いしん坊だったからだ。
中学生時代・・・
▼好きな女からの直撃の言葉
中学生になると、人格も少しずつ形成されてきたのか、他人をいじめることは一切無くなり、女というものがどういう生き物なのかが、少しずつ分かるようにもなってきた。
剣道部に入部、防具を身にまとって毎日練習をしていた事、土曜日も各地の公共武道館で剣道有段者の大人に戦いを挑みまくり修行に励んでいた事。いつしか贅肉だらけのブヨブヨの体は、鋼のように変わっていった。
けれども「ブ男」は「ブ男」。
所詮は、中学生の女達が男を好きになる一番の基準は見た目。
中学生時代も私は数々の敗北を味わう事になる。
中学一年生、他の小学校から入学してきたクラスメイト達とも仲良くなってきた時期。
クラスメイト数名と教室に残って話に花が咲いていた時に、小学6年生の時私が一番好きだった女がたまたま教室に遊びに来た。
小学生時代から、この女の顔は私好みだったのだが、中学生になり更に私好みになっていた。
女が教室に入った瞬間、私と目が合った。
「ドクン」心臓が高鳴るのを覚える・・・。かわいい・・・。
しかしその後女の口からとんでもない言葉が発せられ私を襲う。
「あれ、真田君!? だいぶ雰囲気変わったね。少しは『マシ』になったの?私、小学校の時あなたのこと大嫌いだったから。」
・・・・・・。なんとか顔では笑って見せたが心で泣いた。
自分がいかに小学生時代に女から嫌われ者だったかを、心の底から思い知らされたのだ。
▼初めて告白されるがそれも悪夢に
私に初めての奇跡が訪れたのは中学1年生の3学期頃。突然女に告白された。
その時好きだった女から・・・ではなく、その親友から。
好だった女に呼び出され、その親友から校舎裏で告白された。
「私真田クンの事好きなんだけど。よろしく。」
それだけ伝えられ、「キャー」と言いながら女達はどこかに去ってしまった。
混乱した。初めての経験だったからだ。
私と当時の親友2人と、私が好きだった女のグループ3人。3人対3人は席が近い事もあり毎日のように仲良く話をしていた。そんな矢先の出来事だった。
しかし、女に告白された経験など皆無だった私には、その後どうして良いのか分からなかった。
母親と祖母以外の女から、バレンタインデーのチョコレートを貰った事も無かった男である。10円の「チロルチョコ」を除いて・・・。
何をとち狂ったのかその後私は、告白してくれたその女を避けるようになってしまった。
恐らく好きだった女に告白されなかった事がショックだったのだと思われる。理由はよく覚えていないが・・・。
こうして女と付き合える最初のチャンスをあっさりと見送ることになる。
「悲劇じゃないじゃん!」(あなた)
この体験談はこれでは終わらない。その後すぐにまたもや衝撃的な事実を聞くことになってしまう。
先程男3人、女3人の6名で毎日仲良く話していたと言った。
男A=私(ブ男) 男B=親友(イケメン君) 男C=親友2(イケメン君)
女A=告白してきた女 女B=私が好きだった女 女C=女A、Bの親友
実は女A,B,Cの3人はそれぞれ私達男A,B,Cの人に一斉告白して、集団で付き合えるようにしようと企画していたらしい。
私が好きだった女Bが最初、男Bに告白をする事を決めた。
次に、女Cが男Cに告白をする事を決めた。
最後に女Aが、バツゲームとして、男Aである私に告白をする事をしぶしぶ決めた。
この選び順は「ジャンケンホイ」で決まったらしい。
つまりこの場合女Aは「ジャンケンホイ」で負けた罰ゲームとして、「ブ男」である私に告白した事になる。
それを「また聞き」により知った後、所属している剣道部で竹刀(しない)を握る手に力が入ったのは言うまでも無い。
▼親友よお前・・・
中学2年生クラス替え後、自然に私は新しい女を好きになる。
私が新しい女を好きになった事を、親友(イケメン君)はすぐに気づいた。私はその後その女の事を親友に相談するようになっていった。
「よし俺が孔明の為に一肌脱いでやる」と親友。
「ありがとう。お前って本当にいい奴だな。」と私。
それからすぐに、親友は私の為に、好きな女に話しかけるようになっていった。私がそこに一緒についていくという形である(情けない・・・)。
友人のきっかけ作りが元となり、その女と仲良く話せるようになっていった。その女と話している時は本当に幸せだった。いつも頭はその女の事でいっぱいだった。
それから1ヶ月位が経ったある日、私は親友に相談を持ちかけられた。
「ごめん。真田クン。俺達付き合う事になっちゃった。」
俺達というのは、その「一肌脱いでくれた親友」と「私が好きだった女」の事である。
「親友よ、お前・・・。」
▼修学旅行押入れでの過ち
中学3年生、山中湖修学旅行の夜。
私はクラスメイトの男3人と共に、当時好きになった女が泊まるコテージに忍び込む事に成功した。
忍び込むといっても、先生方に対して内緒なだけで、勿論女達は私達が訪れる事を知っている。
怖い話や好きな人の話などに華が咲いていた時、先生の気配が・・・。
当時は教師が暴力をふるっても大した問題にもならない時代。見つかれば確実に男女共に先生に殴られる。
私達は急いで4つある押入れの中の1つに入った。
運良く、好きだった女を押入れの中に一緒に入ってもらう事に成功した。私の気持ちを知っていた友人が、私を助けてくれたのだ。
当時の私に、好きな女に告白する度胸など一切あるわけが無い。
押入れの中で好きな女と一緒にいる事に胸をドキドキさせながら、当たり障りのない話ばかりをしていた。
「こんな格好のチャンスは無い。」何故か突然このように考え出してしまった・・・。
思春期の少年の考えることは予測不可能。緊張で頭がおかしくなったのか、突然私はその女にキスをしようとした。
「やめてよ!」と本気で嫌がる女。
顔をはたかれ我に返った。
今でこそ笑えるが当時は笑えない・・・。
▼初めての告白 しかし
私には中学3年生の初めから思いを寄せていた女が隣のクラスにいた。美人で頭の良い女だった。
体育の時間は隣のクラスと2クラス合同。体育の時間が楽しみでしょうがなかった。その女の前に来ると、良いところを見せようと、自然と走る足も速くなった。
クラスで好きだった女に修学旅行の押入れの中でふられたこともあり、中学3年時の後半、気持ちはその女に一点集中していた。
クラスメイト達数名に協力をしてもらう事を決意した。中学校最後の思い出に、その女に告白をする決意を・・・。
後は実行のみ!
いよいよ告白決行当日。私は屋上に行く階段の途中で、クラスメイト達が告白ターゲットの女を連れてくるのを待つ。
いよいよ仲間に連れられた告白ターゲットの女が来た。緊張の対面だ。
「ドクン、ドクン」心臓が高鳴る。相手にまで聞こえそうだ。
「今までずっと好きでした。付き合ってください。」と私。
暫く沈黙が続く。
そしてその後「ごめんなさい。私あなたの事知らないんです。」と女。
そりゃそうだ。お互い一度も話したことも無い。